「自分の相続分や他の人の取り分への不満を感じる」、そのようなケースでは「法律」という枠組みの中で自分の要望や権利を主張し、適切な相続分を確保することが有効な手段として考えられます。
ここでは、相続分に納得がいかない場合の解決方法や対処法などについて解説します。
遺産分割に納得がいかない場合の選択肢
法定相続分に基づいて財産を分ける際、どうしてもその内容に納得がいかない場合があります。
そういったケースでは、弁護士による交渉はもちろん、「遺留分侵害額請求」を行なったり、「寄与分」「特別受益」という考え方を用いることで、自分の取り分を増やせる可能性があります。
それぞれの具体的な方法や内容を見ていきましょう。
交渉・裁判手続きを通して主張する
納得のいく割合を確保するためには、相手に応じて交渉と裁判手続きを使い分けることがとても重要です。
基本的に調停や審判になると解決まで時間がかかるため、交渉で説得できそうな状況であれば、まず交渉によって自身の割合を主張します。
相手が交渉に応じない場合は、時間を無駄にしないためにも、早い段階で調停、審判に持ち込むことが早期解決へのポイントです。
調停は話し合いによる和解という意味合いが強く、裁判官や間に入る調停委員に与える印象が結果に大きく影響するため、事前にこちらの主張を裏付ける証拠などを整理して準備しておく必要があります。
調停でまとまらず審判に移行すると、法律的な専門知識をもとに判断されることになるため、法的な要件やルールを把握している弁護士の役割はとても重要になってきます。
「遺留分侵害額請求」で遺留分を確保する
相続人のうち、配偶者、子、直系尊属については、民法で「遺留分」という最低限保護される遺産の割合が規定されています。
「すべての遺産を〇〇に相続させる」といった遺留分を侵害する内容の遺言書が見つかった場合等は「遺留分侵害額請求」によって、侵害された部分に相当する金額を侵害した側に請求することが可能です。
遺留分侵害額請求は口頭の請求でも可能ですが、下記除斥期間が規定されているため、「内容証明郵便」で通知して証拠として残しておく必要があります。
- 相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った日から1年
- 相続開始から10年
除斥期間を過ぎてしまうと、遺留分が取り戻せなくなります。
法改正される前の「遺留分減殺請求」では、侵害された遺産そのものの返還しか請求できなかったのですが、遺留分侵害額請求では、侵害された部分に相当する金銭のみ請求できることに変更されたため、これまでよりも侵害された遺留分を取り戻しやすくなると期待されています。
被相続人の財産増加に寄与していれば「寄与分」で調整する
故人の財産増加に貢献していた場合、その増加分(寄与分)を考慮することで寄与者の相続分を調整することができます。
具体的には、介護費の捻出や相当額の経済的支援等が対象となる行為です。
このような場合には「寄与した分を還元する」ことで各相続人間の公平性を保てると考えられます。
寄与分を認めてもらうには、当然ながら他の相続人がこれを認め合意に至る必要があるのですが、どうしても話がまとまらない場合は裁判所で調停や審判を行い、解決を目指すこともできます。
他の相続人に生前贈与があった場合は「特別受益」にもとづき調整する
進学費用や結婚資金等の特別な支援を受けていた相続人がいる場合、相続人の間で不公平が存在することになります。
このような場合、生前贈与等の支援を「特別受益」として扱い、相続分の調整を図るよう主張することが可能です。
例えば、進学費用を例に取った場合、次のような調整により不公平の是正を図ります。
- 相続人は子3人(子ABCとする)。相続財産1,000万円。
- 子Aと子Cは私大への進学費用を100万円ずつ支援してもらった。
- 子Bだけが大学へ進学しなかった。
子Aと子Cは100万円の支援を受けたと考えることができ、この場合は特別受益を考慮した相続分の調整を行うことが可能です。
具体的には特別受益である100万円×2を相続財産に持ち戻し、遺産総額を1,200万円として仮に設定します。
これを3人で分けるため、1人あたり400万円の相続分となりますが、すでにAとCは100万円を受け取っているため、実際の取り分からそれを差し引き(300万円ずつとする)、Bは400万円をそのままを取得するという手順です。
遺産分割に関する不安や不満は当事務所にご相談を
相続は一度トラブルになってしまうと中々当人同士での解決が難しく、弁護士による交渉、また裁判手続き等を行わなければ前に進まないケースも少なくありません。
実際、当事務所にも年間100件ものご相談が寄せられています。
ご相談は早ければ早いほうが、よりスムーズに問題を解決して手続きを終えることができますので、ご相談を迷っておられる方がいらっしゃいましたら、まずは一度ご相談いただければ幸いです。