被相続人の思いを実現するための遺言書ですが、内容によっては相続人同士の争いの原因となることもあります。
また、遺言書そのものの有効性が問われるケースもあるため注意が必要です。
ここでは、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言それぞれのメリットとデメリット、および弁護士へ依頼した方がよい理由について解説します。
自筆証書遺言の特徴とメリット・デメリット
遺言書を自らの手で作成し保管しておくことができる自筆証書遺言はとても人気が高い方法の1つです。
形式に則って遺言書を自筆し署名捺印しなければなりませんが、2019年1月からは、添付書類である財産目録等についてパソコン作成することが認められました。
相続開始となった場合、自筆証書遺言が本人によるものか、形式に基づく有効性を持っているか、家庭裁判所による「検認」を受けなければなりません。
自筆証書遺言のメリット
遺言内容を全て自筆で書くだけで作成できるので、形式を守れば非常に自由度が高い方法だといえるでしょう。
また、遺言内容を他者に知られることもありません。
自筆証書遺言のデメリット
自筆証書遺言は自由度の高い作成方法ですが、法に則った形式を守って書かなければなりません。
そのため、間違いに気付かないまま保管してしまうと、相続開始後に遺言書が無効とされてしまうリスクもあります。
また、遺言書を自ら紛失してしまう可能性や、万が一遺言書が誰かに発見され改ざんされる可能性も否定できないでしょう。
相続開始後は、家庭裁判所による検認を受けなければなりません。
意外と知られていないこととして、自筆証書遺言では相続税や二次相続、遺留分等に関して見落としが起こりやすいという点が挙げられます。
知識や経験がない方が、相続税や二次相続、遺留分といった相続の特徴まで把握していることはほとんどありません。
従って、実際に相続が起こった時、税金面や親族間での揉め事に発展するケースも珍しくないのです。
自筆証書遺言は、インターネットや書籍で調べながら遺言書を作成できる一方で、紛失や改ざん、隠蔽、無効、相続の特徴の把握漏れ等、数々のリスクが存在します。
税理士登録のある当事務所の弁護士に予めご相談いただければ、間違いのない遺言書を作成する一助となるでしょう。
公正証書遺言の特徴とメリット・デメリット
遺言書を公正証書という公的書類にし、公証役場で保管してもらうのが公正証書遺言の大きな特徴です。
証人2人に立ち会ってもらい、公証人の前で遺言内容を口述し、公証人が内容を書き取った書面に全員が署名捺印して作成します。
公正証書遺言のメリット
公証人は法律の専門家ですので、法的な間違いを起こすことなく、紛失や改ざんのリスクがない公証役場で保管できる点は大きなメリットだといえるでしょう。
また、相続開始後の裁判所による検認も免除されていますので、すぐに遺言執行に移行することができます。
公正証書遺言のデメリット
公証役場で遺言書を作成するには、残す財産価額に応じた手数料を支払う必要があります。
100万円以下 | 5,000円 |
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100万円を超え200万円以下 | 7,000円 |
200万円を超え500万円以下 | 11,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 17,000円 |
1,000万円を超え3,000万円以下 | 23,000円 |
以降、財産額により手数料は増額する。(※日本公証人連合会より抜粋)
また、証人を2人用意しなければならず、遺言書内容は証人2人と公証人に知られることになります。
遺言書を完全な秘密書類とすることができない点は、デメリットといえるかも知れません。
秘密証書遺言の特徴とメリット・デメリット
遺言書は全て自分の手で作成したい、公証人等の他者には知られたくないという場合、秘密証書遺言という方法をとることもできます。
自筆証書遺言のように全て自分の手で遺言書を作成して署名捺印します。
遺言書を封に入れ同じ印鑑を用いて捺印したものを公証役場に持参し、証人2人と公証人の前で提出して全員の署名捺印をもらえば秘密証書遺言の作成手続きは完了です。
秘密証書遺言のメリット
最大のメリットは、遺言内容を誰にも知られることがないという秘匿性にあります。
完全に内容を伏せたまま、公証役場のお墨付きをもらえる点が、公正証書遺言との違いです。
秘密証書遺言のデメリット
公証役場を利用するため、一定の費用が発生します。
また、公正証書遺言と同様に証人を2人用意しなければなりませんので、予め依頼できる相手を探しておく必要があります。
秘密証書遺言の場合、公証役場ではなく自ら保管先を決めますので、紛失しないよう十分に気をつけなければなりません。
また、相続開始後は家庭裁判所による検認を受けます。
公証役場で遺言書であることの証明はしてもらったものの、内容が形式に則っているか等、実際に開封してみなければ有効性を確認できないためです。
どの遺言書も当事務所の弁護士にご依頼いただいた方が安全安心です。
3種類ある遺言書はそれぞれに特徴やメリット・デメリットが存在しますが、いずれも「決められた形式、法的根拠に則った内容でなければ有効でない」という点で共通しています。
有効性を事前に証明しておける公正証書遺言を除けば、自筆証書遺言や秘密証書遺言は、後に「遺言書は無効」とされるリスクがあることも理解しておかなければなりません。
昨今ではインターネットや書籍を通して遺言書にまつわる様々な情報を手にすることができます。
得た情報を参考にして遺言書を作成する人は多いことでしょう。
しかし、当事務所では、ネットで調べながら自らの手で遺言書を作成するのと予め弁護士に相談あるいは依頼して作成するのとでは、後に大きな違いとなって現れてくると考えています。
- ネット情報の正誤を判断することは難しい
- 間違って作成してしまったために遺言書が無効とされるリスクが生じる
- 遺言書がもとで相続人同士の揉め事に発展する可能性が生まれる。
こういったリスクを避け、法的に正しく遺言者の思いを十分に汲み取った遺言書を作成するためには、やはり当事務所までご相談いただくことが必要です。
誰もが納得できる遺言書を作成するためにも、密なコミュニケーションに重点を置いてサポートを行っている当事務所の弁護士にぜひご相談ください。